第2回:「問いかけ」で生まれる信頼関係。

その日は、健診センターで特定保健指導の面談を担当していました。
お見えになったのは、52歳のワーキングママ。
勤続30年、ベテラン会計士のSさんです。

面談前に、健診センターのシステムによって
Sさんの健診結果を確認したところ、
去年とおととしの2年間だけ、
データがありません。
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しかも、3年前と今年のデータを比べると、
体重が10kg以上も増えています。
「なにかあったのかしら?」と気にしつつも、
Sさんを保健指導室に招き入れました。
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緊張の面持ちで入室されたSさん。
「保健指導を受けるのは気が進まない……」
ご様子から、そんなお気持ちが伝わってきます。

ごあいさつのあと、
保健指導の本題に入りました。
「去年とおととしは、別のところで健診をお受けになったのですか」
とお尋ねすると、
Sさんは「いえ、健診自体を受けていません」。

ここから徐々に会話が深まってゆき、
やがてSさんは、
次のようなエピソードをお話しくださいました。

•元夫の浮気問題で、去年とおととしの2年間は、
 休職せざるを得ないほど心身ともに不調を抱えていた。
 それで健康診断を受けられなかった。
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•食べることでストレス緩和を図ったために、
 一時期は、体重が15kgも増えた。

•その後、元夫との離婚が成立し、
 いまは気持ちが落ち着いている。
 この半年で5kgくらい減量できたので、
 体が少し軽くなったように感じている。
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面談が終わりに近づいたころ、
Sさんの表情は、
最初とは比べものにならないほど柔和でした。

そして、帰り際に、このようなことをおっしゃいました。
「最初は、健診を受けていないことを叱られるのでは?
 と思って、ものすごく緊張してたんです。
 でも栄養士さんは、『別のところで受けたの?』って、
 私が健診を受けていることを前提にして
 お話をしてくださいましたよね。
 それで、すごくホッとしたんです」
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Sさんが、このような反応をなさったことに、
こちらが驚きました。

振り返ってみると、
伺いたいことは同じだとしても、
①「昨年はどこか別のところで健診を受けたのですか」と、
②「昨年は健診を受けなかったのですか」と問いかけるのとでは、
ニュアンスが異なります。

私は、いつものように、①の問いかけをしたのですが、
そのことが、Sさんを安堵させたようです。
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「問いかけ」については、
学び続けてはいますが、
今回は、とりわけ「問いかけシーン」というほどではなく、
日常会話の延長のような気持ちで問いかけたのですが、
お辛いご経験をされたSさんにとっては、
心の和む問いかけであったようです。
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あらためて、問いかけの「カタチ」の大切さを実感した、
保健指導の現場でした。
「肯定的指摘」や「肯定的問いかけ」が
人間間の親近感や信頼感をこれほどまでに深めてくれる!!

それは、食事相談や健康相談のスキルとしてではなく、
自分のコミュニケーションスタイルとして
身につけていきたいと、
強く感じた一日でした。
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by yuki-corp | 2024-11-30 08:38 | 健康 | Comments(0)

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