第2回:「問いかけ」で生まれる信頼関係。
2024年 11月 30日
その日は、健診センターで特定保健指導の面談を担当していました。
お見えになったのは、52歳のワーキングママ。
勤続30年、ベテラン会計士のSさんです。
面談前に、健診センターのシステムによって
Sさんの健診結果を確認したところ、
去年とおととしの2年間だけ、
データがありません。
しかも、3年前と今年のデータを比べると、
体重が10kg以上も増えています。
「なにかあったのかしら?」と気にしつつも、
Sさんを保健指導室に招き入れました。
緊張の面持ちで入室されたSさん。
「保健指導を受けるのは気が進まない……」
ご様子から、そんなお気持ちが伝わってきます。
ごあいさつのあと、
保健指導の本題に入りました。
「去年とおととしは、別のところで健診をお受けになったのですか」
とお尋ねすると、
Sさんは「いえ、健診自体を受けていません」。
ここから徐々に会話が深まってゆき、
やがてSさんは、
次のようなエピソードをお話しくださいました。
•元夫の浮気問題で、去年とおととしの2年間は、
休職せざるを得ないほど心身ともに不調を抱えていた。
それで健康診断を受けられなかった。
•食べることでストレス緩和を図ったために、
一時期は、体重が15kgも増えた。
•その後、元夫との離婚が成立し、
いまは気持ちが落ち着いている。
この半年で5kgくらい減量できたので、
体が少し軽くなったように感じている。
面談が終わりに近づいたころ、
Sさんの表情は、
最初とは比べものにならないほど柔和でした。
そして、帰り際に、このようなことをおっしゃいました。
「最初は、健診を受けていないことを叱られるのでは?
と思って、ものすごく緊張してたんです。
でも栄養士さんは、『別のところで受けたの?』って、
私が健診を受けていることを前提にして
お話をしてくださいましたよね。
それで、すごくホッとしたんです」
Sさんが、このような反応をなさったことに、
こちらが驚きました。
振り返ってみると、
伺いたいことは同じだとしても、
①「昨年はどこか別のところで健診を受けたのですか」と、
②「昨年は健診を受けなかったのですか」と問いかけるのとでは、
ニュアンスが異なります。
私は、いつものように、①の問いかけをしたのですが、
そのことが、Sさんを安堵させたようです。
「問いかけ」については、
学び続けてはいますが、
今回は、とりわけ「問いかけシーン」というほどではなく、
日常会話の延長のような気持ちで問いかけたのですが、
お辛いご経験をされたSさんにとっては、
心の和む問いかけであったようです。
あらためて、問いかけの「カタチ」の大切さを実感した、
保健指導の現場でした。
「肯定的指摘」や「肯定的問いかけ」が
人間間の親近感や信頼感をこれほどまでに深めてくれる!!
それは、食事相談や健康相談のスキルとしてではなく、
自分のコミュニケーションスタイルとして
身につけていきたいと、
強く感じた一日でした。
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by yuki-corp
| 2024-11-30 08:38
| 健康
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